(最終更新月:2022年11月)
✔当記事はこのような方に向けて書かれています
「生命保険って相続財産なのだろうか?」
「生命保険に相続税ってかかるのか知りたい。」
「生命保険って相続対策に有効?」
✔当記事を通じてお伝えすること
- 民法上・税法上の生命保険金の扱い
- 生命保険金に税金がかかるケース
- 生命保険が相続に活用できる理由
当記事では、民法上や税法上で生命保険がどのように扱われているかはもちろん、どのようなときに税金がかかり、なぜ相続に活用できるのかまで解説していきます。
生命保険がみなし相続財産である意味
生命保険が「みなし相続財産」になることについて解説します。
みなし相続財産となれば納税する義務が発生するため、どのような意味なのか正しく理解しておくことは重要です。
- 民法上:生命保険は相続財産には含まれない
- 相続税法上:生命保険は相続財産とみなす
- みなし相続財産としての生命保険の非課税枠
民法上:生命保険は相続財産には含まれない
民法上は、生命保険は相続財産に含まれません。
民法上の相続財産とは亡くなった被相続人から受け継いだ財産を指しますが、生命保険の死亡保険金は受取人自身が受け取るものだからです。
従って、遺産分割協議の対象にもなりません。
相続税法上:生命保険は相続財産とみなす
相続税法上、生命保険は相続財産とみなされます。
被相続人(故人)が支払ってきた保険料により、相続人(遺族)は保険金を受け取るからです。
つまり、保険の契約者が亡くなり遺族が保険金を受け取った場合に「みなし相続財産」とされ、相続税の対象となります。
みなし相続財産としての生命保険の非課税枠
みなし相続財産としての生命保険には、非課税枠があります。
生命保険は遺族の生活を保障するためのものなので、一定の配慮がされているのです。
法定相続人1人につき500万円の非課税枠が認められています。
生命保険に税金がかかる3つのケース
生命保険にかかる税金について解説します。
なぜなら生命保険金には、相続税だけではなく、所得税と贈与税がかかる場合があるからです。
- 相続税がかかるケース
- 所得税がかかるケース
- 贈与税がかかるケース
相続税がかかるケース
まず、相続税がかかるケースがあります。
相続税がかかるケースには、2パターンあります。
- 保険契約者かつ被保険者だった故人から遺族が保険金を受け取ったとき
- 第三者を被保険者とした保険の契約者が亡くなり契約者を変更したとき
2つ目のパターンでは、解約返戻金がみなし相続財産価額となります。
所得税がかかるケース
次に、所得税の対象となるケースについてです。
所得税と住民税がかかってきますので、どのようなケースが該当するのかしっかり把握しておきましょう。
所得税が課せられるのは、遺族が保険契約者かつ受取人で、故人が被保険者だった場合です。
保険金は一時所得とみなされ、所得税と住民税がかかります。
贈与税がかかるケース
3つ目として、贈与税がかかるケースがあります。
贈与税には110万円の基礎控除がありますが、相続税よりも税率が高くなるため、どのようなときに贈与税が課されるのか理解しておきましょう。
贈与税がかかるのは保険契約者が遺族、被保険者が故人、受取人が保険契約者以外の遺族または第三者だった場合です。
保険契約者が支払った保険料により保険金が支払われるので、保険契約者から受取人に贈与されたようにみなされます。
生命保険金の相続税額を計算する手順
生命保険の相続税額を計算する手順について紹介します。
正しい計算方法を把握しておけば、事前に準備がしておけるので焦ることもありません。
それでは、下記の例を用いて4つの手順について説明していきます。
遺族:妻と子ども2人
- 相続財産:15,000万円
- 死亡保険金:5,000万円
- 葬式費用:300万円
手順1:課税価格を計算する
最初に、課税価格を計算します。
課税価格が把握できていないと、正しい税額を計算することはできません。
故人が返済すべき債務をはじめ、相続人が負担したお通夜や葬式の費用を遺産総額から差し引くことで課税価格を算出できます。
また、生命保険金は法定相続人の数 × 500万円までは非課税となります。(※受取人が法定相続人の場合に限る)
今回の例では、以下のとおりです。
課税価格 = 相続財産15,000万円+死亡保険金5,000万円-葬式費用300万円-生命保険金非課税枠500万円×3=18,200万円
手順2:基礎控除額を算出する
次に、基礎控除額を計算します。
課税価格から基礎控除額を差し引けるからです。
基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人数で計算することができます。
例の場合は、法定相続人数が妻と子どもの2人なので以下のとおり。
基礎控除額 = 3,000万円+600万円×2人=4,200万円
課税価格から4,200万円が控除されるので、課税遺産総額は18,200万円-4,200万円=14,000万円になります。
手順3:課税遺産総額から相続税額を計算する
続いて、課税遺産総額から相続税額を計算します。
まずは法定相続分通りに相続したと仮定して相続税の総額を計算し、その後で個々が実際に相続する割合で按分するのです。
配偶者は遺産の2分の1、残りの2分の1を子どもの人数で分けます
。例の場合は、妻と子ども1人なので半分ずつになり、課税遺産総額14,000万円×1/2=7,000万円が妻と子どもそれぞれの仮の取得金額になります。
次に、税額速計表を用いて相続税を計算し、総額を出しましょう。
手順4:各個人の税額を計算する
最後に、個々が実際に相続した割合で按分します。
また配偶者には税額軽減があり、16,000万円以下または配偶者の法定相続分相当額までは非課税となるので、この例でいうと妻の納税額は0円です。
生命保険が相続に活用できる理由4選
生命保険は、相続に活用できます。
どのような活用方法があるのか知っていれば、トラブルを防いだり、適切な節税対策を講じたりすることができるでしょう。
- 民法上、相続財産には含まれない
- 生命保険特有の非課税枠がある
- 支払った現金よりも多くなる
- 目的に合わせてお金をよけておける
民法上、相続財産には含まれない
民法上、生命保険は相続財産には含まれません。
先述したように、死亡保険金は受取人固有の財産なので相続財産にはならないのです。
従って、遺産分割協議の対象にもならないため、受取人は他の相続人とのトラブルを避けて財産を受け取ることができます。(保険金額が財産に対して大きな割合となる場合は例外として、相続財産に含まれる場合もあります。)
生命保険特有の非課税枠がある
生命保険特有の非課税枠があります。みなし相続財産として、一定の非課税枠が認められているからです。
法定相続人1人につき500万円分が非課税になります。
支払った現金よりも多くなる
生命保険の受取額は、支払った金額よりも多くなります。
なぜなら、大勢の人が公平に保険料を負担しているからです。
遺族が生活していくための金額は高額となりあらかじめ準備しておくのは困難ですが、保険に加入しておけば大きな保障を受けられます。
目的に合わせてお金をよけておける
目的に合わせて、お金をよけておくことができます。
生命保険金を相続税の納税資金として確保したり、代償分割の原資として活用したりできるからです。
それぞれの状況に合わせ、生命保険を有効活用できます。
まとめ:生命保険は相続でうまく活用すべき金融商品のひとつ
当記事の内容をまとめます。
- 生命保険金の扱いは、法律により少し違う
- 生命保険金には非課税枠がある
- 生命保険金は原則、遺産分割協議の対象にならない